患者とのコミュニケーションで大切なのは、本人の気持ちを受け入れることである。医師と患者の意思疎通を代わりに担うと勘違いしている看護師も少なくない。もちろんお互いが言葉足らずであれば、看護師が代わりに伝達することもある。しかし、それがコミュニケーションのメインではない。
多くの患者は、病気にかかるとネガティブな思考に陥りやすい。時には、家族や友人など信頼できる人に対して当たってしまうこともある。そうした複雑な心境を傾聴し、受容しなければならない。この時、患者の考えを頭から否定するのは良くない。命を絶ってしまいたいと言われたとしても、まずは受け止めるのだ。しかし、肯定して本当に命を落としてしまえば看護師の責任にもなりかねない。本人の気持ちを尊重しつつ、生きることに前向きになるような慎重な言葉選びが求められる。
患者とのコミュニケーションが大切な理由には、信頼関係の構築という意味も含まれている。全く面識がないまま励まされるよりも、少しずつ信頼を築き上げて支えてもらった方が、患者にとって安心するのだ。また、患者本人だけではなく、家族とのコミュニケーションも重要である。患者が塞ぎ込んでコミュニケーションを拒絶した時も、家族から情報を得られる可能性があるからだ。また、家族が抱える悩みや不安などを取り除くためにも、積極的なコミュニケーションが必要である。
コミュニケーションはそう上手くいくものではない。しかし諦めずにコミュニケーションを続けたら、患者も心を開いてくれる。