看護において、患者とのコミュニケーションは重要だ。コミュニケーションとは、相互に働きかけることが可能な関係の上に初めて成立するものであり、看護師からの一報的な発信であってはならない。しかしながら、患者から積極的に看護師に意思疎通を図ることは難しいだろう。患者は傷病を抱え、心身が弱っているうえ、医療の素人である。コミュニケーションをリードする主体は看護師であり、患者は受け身にならざるを得ないのだ。
そこで、看護師は患者がどんな情報や対応を求めているか、よく考えなければならない。看護師にとって最も重要なことは、患者からの信頼を得ることである。患者が信頼感を持てるのは、患者が必要だと思う情報を必要な時に与えてくれる看護師である。
具体的には、これからどんな検査をするのか、検査にはどれくらいの時間がかかるのか、といったことや、さらに検査までどれくらい待たされるのかといった情報も、推測で良いから与えてくれる看護師に対して、患者は安心感を抱けるだろう。必要最低限のことだけ機械的に伝えるのではなく、患者に症状に対する気遣いも求められる。
診療のプロセスについて、看護師や医師だけがわかっていれば問題ないと考えるのは、ホスピタリティに欠ける診療態度である。患者は神経が過敏になり、医師や看護師の言葉に一喜一憂する。看護師が患者と十分なコミュニケーションを取ろうとしないと、患者は看護師に対して不信感を抱き、些細なことでも自分が不利に扱われたように錯覚して、クレームに走りやすくなるおそれもある。治療法や投薬についても、医療過誤を疑い、協力的な姿勢を保てないかもしれないのだ。患者と信頼関係を築くためにも、仕事をスムーズに行うためにも、コミュニケーション力は看護師に欠かせないスキルと言えるだろう。